空間知能化(Intelligent Space)
空間知能化とは、空間を賢くし、人間を支援する研究です。人になるべく負担をかけず、環境側にセンサ、ネットワーク、人工知能など様々なデバイスを分散配置することで空間内の人間を支援することを目指しています。このようなシステムを開発するプロセスを空間知能化、それで出来上がる賢い空間を知能化空間と呼んでいます。空間知能化は様々な要素技術及び機能が必要とされる研究テーマで、様々な小テーマがあります。
空間コーディング
知能化空間の実現には、ユーザにとって便利で快適な空間を構築することが求められます。しかし、その空間に求められる機能はユーザごとに異なります。そこで必要となるのが、ユーザ自身の要望に応じて、ロボットや家電のふるまいを自由に定義できる「空間コーディング」という技術です。 空間コーディングでは、専用のインタフェースや自然言語といった直感的な入力方法を用いることで、誰でも簡単に空間の機能を設定することができます。これにより、一般的なユーザでも、自分に合った知能化空間を自由に構築できるようになります。
マルチカメラ環境におけるリアルタイム人物再識別
私たちは、部屋内の複数のカメラにまたがって人を検出し追跡できるシステムを開発しました。各カメラごとに、ディープラーニングを用いて人物の位置と骨格姿勢を検出します。

その後、システムは異なるカメラ間で同一人物に対して共通のID番号を生成することでマルチカメラトラッキングを実現します。これらすべては、一般的なコンシューマ向けGPUを用いてリアルタイムで処理されるため、さまざまなアプリケーションへの導入に適しています。
情報共有プラットフォームの開発
本研究では、知能化空間に配置した複数のカメラから得られるデータを一つの地図上に統合し、ロボットや各種アプリケーションと情報を共有できるプラットフォームの開発を行っています。
本プラットフォームは、空間内の人の位置や移動履歴を蓄積・可視化し、リアルタイムでの人物トラッキングを可能にします。これにより、例えば長時間特定の場所に滞在して作業している人物に対してのみサービスを提供するなど、滞在時間や行動パターンに基づいた適切なサービスの提供が可能になります。
忘れ物検出
本研究では、忘れ物防止機能の実現を目指しています。忘れ物は日常生活で頻繁に発生し、精神的・金銭的な損失や不安の原因となります。特に、出勤や通学時に「何かを忘れていないか」と不安に感じる人は多いです。
人が物体に接触し、移動・放置する一連の行動をカメラでトラッキングし、最終的な物体の位置を把握することで忘れ物を検出しています。物体の種類や操作した人物のログも記録し、必要に応じて使用者に通知を行うことで、迅速な対応を可能にします。将来的には、使用者のスケジュールと連携し、忘れそうな物を事前に予測・伝達する機能,使用者にわかりやすく伝える機能の実現も目指してます。また、この技術は介護や防犯など、他分野への応用も期待されます。
携帯端末を用いたインタラクションシステム
本研究では、スマートフォンなどの携帯端末を使って知能化空間内の機器と直感的にやり取りできるインタラクションシステムを提案しています。ユーザはスマートフォンのカメラを通して機器を撮影すると、機器に対応する操作画面が表示されてそのまま操作することができます。これまで提案されていた R-Fii というシステムでは、物体を操作するために事前に学習させたデータが必要であり、同種類の物体が複数存在する場合には区別が難しいという課題がありました。
そこで本システムでは、物体認識に事前学習なしで使える最新のモデル「YOLO-World」を導入し、スマートフォンのカメラの位置・向き(姿勢)情報を活用することで、同じ種類の物体を正確に見分けられる仕組みを実現しました。
家具再配置システム
本研究は、空間知能化の一環として、現在の状況に応じた室内の物品配置の最適化を目指すシステムの開発に焦点を当てています。空間内において人々が家具を使用する過程で、その位置がずれることがあります。ここでは、特に移動頻度の高い家具である椅子に着目し、リアルタイムで位置を修正するシステムの開発を目的としています。
具体的な実現方法として、空間内に配置されたカメラを用いて椅子の位置を取得し、事前に設定された位置と比較することで、ズレが発生しているかを判断します。ズレが検出された場合、ロボットが椅子の現在位置の情報を受け取り、椅子を元の位置に戻します。